女「ちがうの?」
男「鉛も落ちる」
女「あれ…でもさっき水に溶けるって言わなかった?」
男「熱水には溶ける」
女「……化学きらい」
男「そんなこと言わずに」
女「だって分かんないし!」
女「面白くないし!」
男「お、女さん…」
女「あ、……」
女「(皆の白い目が…)」
男「…出ようか」
女「…………」コクン
図書館前
男「恥かかせちゃってごめん」
女「……私のせいだって」
男「中途半端なとこで終わったからどっかで続きしようよ」
女「う、うん」
女「(家とか言い出さないで…)」
男「学校行くか」
女「学校?」
男「まずは自転車取りに行かなきゃ」
女「うん」
ピッ
『清算金額は 150 円 です』
男「(よし。小銭ぴったりあるな)」チャリン
女「…………」
学校
女「今って学校開放してるんだ」
男「テスト前に図書室だけな」
男「意外と快適でさ。あんまり人もいないし」
女「へー」
女「……っていうかちょっと変な感じするね」
男「あぁ。私服だから?」
女「そうそう」
男「たしかに。んじゃ行こうか」
女「今度こそお手柔らかに…」
……
…
女「ん…放物線C上の点Pに対して、接線…平行…対称移動…」
女「ねぇ」
男「どうしたの?」
女「数学ってなんでこんなに文章が分かりづらいのかな」
男「分かりづらい?」
女「さっぱり。喉も乾いた」
男「俺、買ってくるよ。何がいい?」
女「いいの?」
男「もちろん」
女「じゃあ炭酸じゃないやつ」
男「あいよ」
男「帰ってくるまでにその問題終わらせてね」
女「えぇ…無理だよ…」
男「できるできるー」スタスタ
女「(行っちゃったし……はぁ……)」
数分後
男「……」ガラガラ
女「zzz」
男「寝てる…」
男「……えーと」
男「タンジェント使わずに解こうとしてたのか」
男「こりゃ無理だ」
女「zzz」
男「…………」キョロキョロ
男「(図書室に二人きり…相手はお昼寝…)」
男「…………」
男「ここでイタズラなんかやってしまった日には」
男「一生彼氏になれないような気がする」
……
…
女「……ん」ゴシゴシ
女「え……」
女「あ、そっか。学校来てたの忘れてた」
男「zzz」
女「一緒に寝てたんだ。起こしてくれればよかったのに」
女「……ミルクティーもぬるくなっちゃったみたい」
女「せっかく買ってきてもらったのになぁ」
男「zzz」
女「…………」
女「…………」
女「(私の弱さがいけないんだ…)」
女「(断れなくて…)」
女「できるだけ…できるだけ傷つかないように振るから…」
女「ごめんなさい」
女「……私のふざけた遊びにあと少しだけ付き合って」
女「傷つかないようにするには…」
女「罰ゲームだとバレずに、惚れられる前に振る」
女「これが最重要よね」
女「(なんだか自意識過剰だけど)」
女「…………」
女「(まぁ…急に告白されて)」
女「(すぐに好きになることなんて、ないよね?)」
女「そうだよね?」
男「zzz」
女「(告白よりも前に好かれてることはないはずだし…)」
女「(一回も話したことないから、その可能性はないし)」
女「(今だけ注意してれば…きっと平気…)」
女「…………」
女「(ズルくて、ごめんなさい…)」
女「名前も呼んであげてないし、手もつないでないのに文句も言わないし」
女「……もしかしてプラトニックな関係が好きなのかな」
男「zzz」
女「ねぇ…答えてよ」
女「…………」ジー
女「…………」ジー
女「もしゃった髪とか短くすればいいのに」
女「爪もちょっと伸びてるなぁ。切ればいいのに」
女「これはきっとあれだ。姉とか妹とかがいない長男タイプとみた」
女「…………」
女「…………」
女「って何やってるんだろ私」
女「置いて帰っちゃおうかな」
女「そしたら…」
女「さすがに愛想つかして向こうから振ってくれる…はず」
女「そうだ。我ながらこの作戦けっこういいかも」
女「罰ゲームは完了するよね。規定違反はしてないわけだし」
女「…………どんな感じで言われるんだろ」
男『置いていくなんてひどいな』
女『わるい?』
男『……知るか』
女『怒ってるわけ?』
男『呆れてんの』
女『……ふーん』
男『なんだよその返事』
女『べつに』
男『はぁ』
女『言いたいことあるなら…』
男『別れよう』
女『……、』
女「……」ズキ
女「……」
女「……」
女「なんか…」
女「なんかわかんないけど」
女「…………」
女「…………振られるのはイヤ、かも」
女「…………」
女「…………」
女「(人で遊んでて振られるのはイヤって…)」
女「最低だよね」
女「(……でもきっとこんなキツい言い方をされることはないと思う)」
女「(優しすぎるんだ…)」
女「あの図書館に設置されてる一時駐輪」
女「料金かかってたってことは私がメールした時には家を出てたんだよね?」
女「じゃないと計算が合わない」
女「……それなのに嘘までついて」
女「なんでそんなに優しいの…?」
女「他の子にもそうなんだよね?私が特別ってわけじゃ…」
女「もしそうだったら……」
男「……ん」
女「!」
男「あ、やば」ガタッ
女「…………」
男「あ、女さん。起きてたんだ」
男「俺寝てたのか。ごめん」
女「(どうせならマネしてみようかな…)」
女「……謝んなくていいよ。私もついさっき起きたところだから」
男「そっか。よかった。勉強教えるつもりだったのに」
女「じゃあここお願い」
男「あ、その前に自販機行って買ってくる」
男「ぬるくなってるし」
女「……平気。もう涼しくなってきたから。買ってきてくれてありがと」
男「いえいえ」
男「んで、その問題は…」
男「ここでαとθ使って…この角度を…」
女「うんうん」
女「(あっちの言い方はマネできない)」
女「(…………見惚れてたなんて、ぜったい言えない)」
……
…
夜 男宅
男「ただいま」
妹「んかえい」モグモグ
男「はいはい」
妹「……」ゴクン
妹「チッ」
男「急にどうした」
妹「盗聴器とか仕掛けりゃよかった」
男「何の話?」
妹「出かける前には無かったのに、寝た跡が顔についてる」
妹「寝てる間に何か話しかけられた可能性もある」
男「……探偵か?」
妹「女子高生探偵っていい響きね」
男「ってか寝てる人に話しかけることなんてあるか?」
妹「女さんは今日寝なかった?」
男「いや、寝てたよ」
妹「その時、終始無言だったの?」
男「なんかしゃべった気がする」
妹「チッ」
男「すんません」
妹「…………」
妹「女さんが寝てたとき、何かした?」
男「思いとどまった」
妹「バッドエンドにならずに済んでよかった」
男「(危ねぇ…)」
妹「今日からは……我慢の期間に入る」
……
…
ピリリリ
男「……女さんからか」
女『明日も勉強会開きたいな。予定空いてる…?』
男「ふひひ、空いてまーす」カチカチ
妹「……」ペチッ
男「いたっ」
妹「我慢の期間は分単位じゃないの」
男「冗談です」
妹「……さっそく来たみたいね。罰ゲームのデート回数を知らなきゃ歓喜できるんだけど」
男「今これが来るってことは…」
妹「とにかく早く5回のデートを終わらせたいんだろうね」
男「はぁ…」
妹「落ち込む気持ちもわかるけど、今は前向いて頭使うとき」
男「そうだな」カチカチ
男『ごめん。明日はちょっと予定入ってるんだ』
女宅
女「……予定入ってるんだ」
女「まぁちょっと詰め過ぎたかな」
女「いつにしよう…」
……
…
男宅
男「好きな人からの誘いを断るなんて…」
妹「行ったら今より窮地に立たされるよ」
男「おっしゃる通り」
妹「(女さんは、変なとこで真面目で変なとこで優しい)」
妹「(だからきっと……不自然だと思われる振り方をするとは思えない)」
妹「…………」
妹「(……そろそろ連絡取っとかなくちゃいけないよね)」
妹「(忙しくなかったらいいんだけどなぁ。姉上)」
翌日 男宅 (日)(7/5)
妹「我慢の期間とは言ったけど、やることがないわけじゃない」
男「女友さんからだな」
妹「ん。口裏合わせが必須になるから」
妹「効果的なタイミングで当てたいけど」
妹「ちょっと難しいか…」
男「とりあえずアポは取っておこう」
妹「うん。テストって水曜からだったよね?」
男「そうだな。金曜まで」
ピリリリ
男「…もしかして」カチカチ
女『月曜日と火曜日も埋まってるのかな?テストまでにデートしたいな』
妹「笑えるくらい詰め込みたいらしいね」
男「……これさ、今のペースで普通にデートして振られない可能性はゼロ?」
妹「ゼロ、とは言えない」
妹「私の勘で悪いけど……そうね」
妹「ゾンビ映画で追いかけられてる女が一度もこけないくらいの確率かな」
男「つまり、ゾンビから逃げる時に車のエンジンが一発でかかる確率よりは高い、と」
妹「誤差の範囲よそんなもん。ほぼゼロ」
男「うひょー」
妹「これだけ誘われるなら…」
妹「テストの力も借りて焦らさないと」
……
…
女宅
女「……全部断られた」
女「はやくしないと」
女「もっと傷つけることになっちゃう…」
翌日 学校 (月)(7/6)
女「おはよ」
女友「あ、お、おはよ」
女「ねぇ」
女友「…何?」
女「たしか…先週の金曜とかも思ったけど、最近女友ちゃんおかしくない?」
女友「そうかな」
女「罰ゲームのことも聞いてこなくなったし」
女友「じゃあ今日からたっぷり聞いてあげるよ」
女「……うーん」
女友「3回目のデートはしてきたの?」
女「(ほんとに聞いてきた)」
女「3回目は、もうしたよ」
女友「……そうなんだ」
女「(たいして興味持ってなさそうだし…)」
女「(女友ちゃんが提案した罰ゲームなのに…)」
……
…
お昼休み
女「(あ、今ひとりだ。今の内にスケジュール聞いとこうかな)」
女「(さすがに今週ずっと埋まってることはないと思うし)」
女「(うーん。どうしよう…)」
女「(でも皆に見られたくないしなぁ…)」
男「あ、来た来た」
妹「来た来たじゃなくて早く食堂行くよ」
男「あいよ」
妹「また、寝てたでしょ。顔に跡ついてる」ペチペチ
女「…………」
女「…………」
女友「誰だろうね」
女「…………」
女友「ど、どしたの?」
女「…………」モグモグ
女友「(ハムスターみたいになってる…)」
翌日 お昼休み (火)(7/7)
女「(あ、またあの子来てる…)」
妹「おぉ今日は寝なかったんだ」
男「いや、寝方変えただけ」
妹「あぁそうなの」
女「…………」モグモグ