女「わかってる」
女友「それならいいんだけどさ」
女「……」
女友「でさ、感想は?」
女友「惚れちゃったりした?」
女「……何言ってるの?」
女友「もー」
女友「そんなに怖いと魅力半減しちゃうよ」
女「……私、デートの予定立てるのに忙しいから切るね」
女友「え、もしかしてもしかしてやっぱり惚れ」
女「おやすみ!」
ガチャッ
女「(告白したのが月曜日…)」
女「(金曜日に買い物。土日は一回デートしたいな)」
女「(それでやっと三回目が終わり……)」
女「(いっぱい予定詰めてデートして、すぐに振っても別に不自然じゃないよね…?)」
女「(今日も随分と眠たそうにしてたけど、何か理由あるのかな)」
女「うーん」
女「(まぁ関係ないし、はやく終わらせたい…)」
女「あ」
女「いいこと考えた。何回もデートするうちに友達としての気持ちの方が強い」
女「ってことに気が付いた……って理由ならなんとなくいけそうかも」
女「…………」
女「(今日のデート…)」
女「(4時間くらい一緒にいたけど特に何も思わなかった)」
女「…………ん?」
女「何も、思わなかった?」
女「(告白した時は、もっとおどおどしてたり)」
女「(びくびくしてる印象しかなかったような…)」
翌日 帰宅路 (木)(7/2)
男「(今はひとりみたいだな……ってこれじゃストーカーだ)」スタスタ
男「女友さん」
女友「!」
女友「お、男君、偶然だね」
男「ちょっといいかな」
女友「(まさか…)」
女友「どうしたの?」
男「…………」キョロキョロ
男「(誰もいないな)」
男「ありがとう!」ガシッ
女友「!」
女友「手、手が…」
男「俺うれしいよ」
女友「な、何が…とりあえず手離して…」
男「あぁごめんごめん」
男「ちょっとの間だけでも俺に夢を見させてくれてるから感謝したくて」
女友「(……もしかして)」
男「こんなの取引条件になるか分かんないけどさ…」
男「すっごい丁寧に勉強教えてテストの成績上げるから、頼む!」
男「情報をください!」
女友「え、情報…?」
男「ダメか?」
女友「え、そ、それって、その…」
男「ん?もちろん罰ゲームの話だけど」
女友「(や、やっぱり)」
女友「ご、ごめんなさい!ほんと軽い気持ちでこんなことしちゃって」
男「……………………」
男「いいよいいよ、謝んなくても。さっきも言ったけど俺うれしくてさ…」
男「……俺が前から好きってことがバレてるんなら」
男「からかわれてるみたいでイヤだったけど」
女友「う、ううん。あの子はその事知らないみたいだから」
男「そっか。よかった…」
男「で、さっきの話だけどいいかな?」
女友「で、でも情報なんて私…」
女友「あ、いつまで、ば、罰ゲーム…するとか?」
男「それも聞きたいけど」
男「提案したのは誰なのか気になって」
女友「……」
男「口止めされてる?」
女友「あ、いや、えっと…そんなことは…」
女友「……わ、私が、その…」
男「罰ゲームはいつまで?」
女友「……わ、私が言ったのは2週間なんだけど」
男「2週間…」
男「条件というか……他の取り決めとかはある?」
女友「えっと…なんだったかな…」
男「……どっかお店入ろうか?」
女友「い、いや結構です…!」
女友「あ、あの、デート回数は、さ、最低5回…って……決め、ました…」
男「…………」
女友「…………」
男「最低…」
女友「!」
男「ん?」
女友「(あ、い、今のは復唱しただけか…)」
男「一番重要なとこなんだけど」
女友「な、なに…?」
男「2週間経ったら振る……みたいな取り決めは?」
女友「えっと…たしか、続けてもいいし振ってもいいって言ったと思う…思います…」
男「…………」
女友「…………」
男「女さんが好きなことでも教えてもらおうかな」
女友「……う、うん」
……
…
男「ありがとう。もう十分聞けたよ。これから頑張る」
女友「ってことはやっぱり…」
男「うん。アタックし続けてほんとに好きになってもらう」
女友「…………」
男「だから今日の事は女さんに内緒にしてほしい…頼む!」
女友「う、うん…わかった」
男「ありがとう。助かったよ」
女友「(なんで私が…お礼されるなんて…)」
……
…
女友「はぁ…」
女友「(いろいろ神経すり減って寿命縮んだかも…)」
女友「(正直もっと、なよなよしてる気がしてたんだけど)」
女友「(……告白が月曜日で今日が木曜日)」
女友「(男子三日会わざれば……ってやつ?)」
帰宅路
男「(罰ゲームの首謀者当ては成功したけど)」
男「(成功したけど…)」
男「…………」
男「(言われて傷つくってことは、まだどっかで信じてたんだ…)」
男「(どう考えたって罰ゲームに決まってるのに…)」
……
…
男「(遊園地)」
男「(水族館)」
男「(プラネタリウム)」
男「(料理は、イタリアン)」
男「(夜景より、海)」
男「(花火…)」
夜 男宅
妹「うまくいった?」
男「たぶん」
妹「そっか。脅さなくても大丈夫だったんだ」
男「下から攻めた」
妹「口が回ったみたいでよかったよ」
男「中身を妹と思え作戦は万能だ」
妹「……でもキツいのはこれからだよ兄さん」
男「そうだな」
妹「女さんは惚れられてることを知らなくて、期間は2週間、デートは5回」
男「来週の日曜までだな」
男「あと、アドレスも聞けた」
妹「おっけー。んで、この条件はどっちかクリアで終わりなのかな」
男「いや、どっちもクリアするのが条件だってさ」
妹「……性格も考慮すると、焦らしもいけるかも」
男「?」
妹「前のデートは上手くいったみたいだから次もこの調子でいかないとね」
男「ちょっとくらいは意識してくれてるかな」
妹「好印象なんて100%ない。今の段階だと良くてプラマイゼロくらい」
男「それ相当まずいんじゃ」
妹「そんなことない。罰ゲームの初デート終わりに負の感情がないなんて普通ありえない」
男「まぁたしかに…」
妹「(聞いてると女さんの性格は変なところで真面目みたい)」
妹「(言われた事はやり遂げる仕事人みたいなタイプね)」
妹「(罰ゲームを途中で投げ出さない……くらいの真面目さなら歓迎だけど)」
妹「…………明日はとりあえず無難なとこから攻めるか」
男「…………」
妹「どしたの?」
男「今後のことなんだけど…」
翌日 放課後 (金)(7/3)
女「(帽子買ってもらうのはイヤだな)」
女「(変なところで借りなんて作りたくないし)」
女「(うーん…)」
女「(っていうか、今日は女友ちゃん何も聞いてこなかったなぁ)」
女「(…………もしかして、飽きたとか?)」
女「(そしたら反故にできるんじゃ…)」
女「(いやでも…)」
男「なんか考え事?」
女「!」
女「びっくりした」
男「そんなに?」
女「……ううん。はやく行こ」
男「了解」
女「(他の人にあんまり見られたくないし)」
ショッピングモール デート 2回目
男「結構混んでるな」スタスタ
女「金曜だからかなぁ」スタスタ
男「そうかも」
女「(しかもカップルだらけ…)」
女「(手つなぎたいなんて言わなきゃいいけど)」
男「あの帽子はどしたの?被ってないけど」
女「……あんまり人が多いとこでは被りたくなくて」
男「もしかして」
女「何?エスパー?」
男「……なんとなくだけど、ミーハーに見られたくないんだろーなって」
女「(すご…)」
男「やっぱ外れてた?」
女「教えてあげない」
女「……機嫌は直ったけどね」
男「キャップ女子の事まだ引きずってたのか」
女「まぁね。でも直ったから」
男「それは助かった」
男「俺も漫画とか好きだからミーハーに見られることあるんだよ」
女「そうなんだ」
男「アニメ化とか実写化すると特に」
女「うーん…」
女「私はあんまり興味ないからわかんないけど」
女「女友ちゃんもそんな話してたような…」
男「もしかして女友さんと趣味合うのかもしれない」
女「オススメしてくれた漫画なんだったかな」
女「……食戟の巨人だっけ」
……
…
女「あ、この店よく行くんだ」
女「私好みのが多くて困るくらい」
男「選ぶの大変だな」
女「そそ」
男「片っ端から被ってくか」
女「えぇ…恥ずかしいよ」
男「そう言わずに」
女「……じゃあまずはこれを」
男「似合う!かわいい!」
女「まだ被ってないんだけど」
男「エスパーだから」
女「いやいや」
男「可愛いから何でも似合うし」
女「……」
女「(……お世辞だよね?)」
……
…
女「よし、君に決めた」
男「ん。かわいいな」
女「(全部褒めてたくせに…)」
店員「ありがとうございます。当店のメンバーズカードは…」
男「女さん持ってる?」
女「うん。どこだったかな」ガサゴソ
男「…………」スッ
女「あ、これこれ」
女「(ってもうお金置いてある!)」
男「あ、ごめん。端数ないや。小銭ある?」
女「え、あ、うん…」チャリン
店員「ありがとうございます」
……
…
女「お金、返すよ…?」
男「俺が誘ったんだから払わせて」
女「うーん…」
男「じゃあ今度なんか奢ってよ」
女「……わかった」
男「今日は被んないの?」
女「これは明日以降のお楽しみ」
男「それは残念」
女「……あ、もしかして」
女「あのスタバにいるのウチの学校の子じゃない?」
男「ほんとだ。下級生かな」
女「そうかも」
男「みんな勉強してるな」
女「そういや来週からテストだもんね…」
男「やたら落ち込んでるけど」
女「勉強ほんと苦手なの」
男「そうなんだ。初耳」
女「いやもう引くほどダメで」
男「そんなに?」
女「とにかく引くよ」
男「いやいや勉強できないくらいで引かないと思うよ」
女「いや引く」
男「引かないって」
女「引く!」
男「なにその自信」
女「…………」
男「(……人は熱意で堕とす)」
男「じゃあ……土日のどっちか勉強会しない?」
夜 女宅
女「勢いに押されてアドレスまで交換しちゃった」
女「テストの話なんかするんじゃなかったのかなぁ…」
ピリリリ
女「あ、メールだ」
男『明日の集合は何時にしようか』
女「……深夜に観たいドラマがあるから明日は遅い方がいいんだけど」カチカチ
女『1時半がいいな』
ピリリリ
男『了解。じゃあおやすみ』
女「(返信はやっ)」
女「おやすみ…?」
女「まだ8時なのに…」
女「もしかしてはやくメール切り上げたかった…とか?」
女「まぁいいや」
女「でも図書館って言ってくれてよかった」
女「家になんか行きたくないし」
女「連れてくるのもいやだし」
女「(たしか賢かったはずだから、ちゃんと教えてもらお)」
女「(無事にテスト乗り切れたらいいなぁ)」
女「…………」
女「…………」ガサゴソ
女「…………」ポスッ
女「うん。やっぱりこのキャップが一番かわいいや」
女「明日被っていこうかな」
女「(……でもちょっと恥ずかしいような)」
女「(買ってすぐ明日のデートで使うなんて…)」
女「(なんか張り切ってるみたいに思われる気もするし)」
女「…………」
女「うん。やめとこ」
翌日 女宅 (土)(7/4)
女「zzz」
女「…………」ゴシゴシ
女「ん…いまなんじだろ…」
女「あー、やばい」
女「寝坊しちゃった」
女「……今から手早く用意しても30分は遅刻確定」
女「メールしとこうかな」カチカチ
女『ごめんなさい。寝坊しちゃったから1時間くらい遅れそう』
女「はぁ…ねむたい…」
ピリリリ
女「え…」
女「返事早すぎない?」カチカチ
『そうなんだ。じゃあ俺もゆっくりしてから出るよ。集合は2時半にしよう』
女「よし、助かったみたい」
図書館前 デート 3回目
女「ごめんなさい、遅れちゃって」
男「大丈夫。俺も今着いたから」
女「ありがとう」
男「(昨日の事を考えるとアニメの線はないだろうな……)」
男「俺も昨日は海外ドラマ観てて寝坊しかけたから強く言えなくて」
女「DVD見てたの?」
男「いや、先月くらいから深夜でやってるやつ」
女「ふふ」
男「?」
女「私もそれ見てたよ」ニコニコ
男「(え、笑顔!)」
男「(あー、なんかもう眺めてたい…)」
女「?」
女「ニヤニヤしてるけど聞いてる?」
男「ん、ごめん。見惚れてた」
女「なにそれ」
女「(こんなこと言うタイプだったんだ。やっぱり告白した時とはかなり印象にズレが…)」
男「とりあえず、入って猛勉強しようか」
女「お手柔らかにお願いします」
……
…
一時間後
女「わけがわかりません」
女「塩化物イオンが…マイナス1だから…」
男「落ちるのは?」
女「銀…」
男「それだけ?」