【24話】生きてる人間が一番恐ろしいと感じる怖い話

22.真夜中の訪問者

私は父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。(現在は結婚して、家は出ていますが)

私がまだ母と暮らしていた、17歳の頃の事です。

夜中の3時ぐらいに、ピーーと玄関のチャイムが鳴りました。

丁度その日は母と夜中までおしゃべりをしていて、二人とも起きていました。

「こんな遅くに誰だろね」なんて話しつつ、私が「はい」とインターフォンをとりました。

そうすると女性の声で、「あの…あの…突然すみません…。今晩、あの…泊めて頂けませんか」と。

声の感じでは40代ぐらい。

その妙におどおどしていた感じが気になって、

「え?泊めてくださいって母の知り合いの方ですか?」と聞き返しました。

すると相手は、

「いえ…全然違うんです…あの…私近所のマンションに住んでまして、

 あの…私会社をクビになって…あの…もう住む所がなくて…だから泊めて頂きたいと…」

話がよく理解できなかった私は、

「母の知り合いではないんですね?でも泊めるのは…」と、おろおろしてしまいました。

そこで見かねた母が「私が変わるから」といって、インターフォンで話はじめました。

私は一体なんなんなんだろ?と思って、玄関の窓越しに相手を見に行きました。

私が玄関の窓越しにみたその女性は、明らかに変な人でした。

まず、顔はもうどうみても50代なのに金髪の長髪。

白い帽子をかぶっていて、明るい緑のブラウスに、赤地に白の水玉のふわっとしたスカート。

右手には、たくさんの物が入った紙袋を持っていました。

その様子をみて、「これは変な人だ!!」と察知した私は、

まだインターフォンで話している母に、

「ちょっとママ!玄関に来てる人、絶対変!怖いからもうやめよう!

 相手にしないで『駄目です』っていって断ろう!」と、まくし立てました。

そしたら母は、「ははははは」と笑って、

「なんかこの雨の中、傘もなく歩いてきたんだって。怖いなら、傘だけでも貸して帰ってもらおう」

と言うじゃありませんか。

その日は、確かに雨がざんざん振りでした。

私はもう、その人の外見をみてるので泣きたくなって、こういう事にだけは度胸がある母をうらみました。

私は怖くなったので、玄関から離れた奥のリビングで、玄関の様子を伺っていました。

母が玄関を開けて話している声が聞こえてきて、しばらくすると、

「家には入れられません!帰ってください!」と、母の怒鳴り声が聞こえました。

私は普段、母の怒鳴り声なんか聞いたこともなかったので、

それだけでかなりビビッてしまい、その時点で涙目になっていました。

玄関ではガチャガチャガチャガチャ!!と、

チェーンの付いた扉を無理やり開けようとする女性と、閉めようとする母が出す音が大きく響き渡り、

17歳の私を泣かせるだけの迫力がありました。

でも、その押し問答の最中も聞こえてくるのは母の声だけ。相手の声はしません。

やっとバタン!と玄関が閉まる音がして、母がふぅふぅ言いながら部屋に帰ってきました。

「あの人、やっぱり○○(私の事)の言うとおりだね。頭おかしいみたい。怖かったでしょう、ごめんね」

と母が言うので、「なんかされたの?大丈夫??」と聞き返しました。

すると母はまた笑って、「いやいや、全然大丈夫。今日はもう寝なさい」と。

しかし、この話をしている最中に、また玄関のチャイムがピーーピーーピーーピーーと物凄い勢いで鳴り始め、

今度は玄関のドアが、ドンドンドンドン!!と叩かれました。

私のビビり具合はMAXに達して、「警察に電話しようよ!」と泣き始めました。

母は「あとしばらく続くようなら警察を呼ぼう。あなたはもう寝なさいって。大丈夫だから」

と言い、寝る準備を始めました。

私は怖くてなかなか寝付けず、しばらく玄関の音に耳をすませていました。
玄関の音は30分ぐらいで止みましたが、

それ以来しばらくは、夜中のお客さんは怖くて怖くて仕方ありませんでした。

その夜の出来事から5年後、私は一人暮らしを始める事になりました。

明日から新しい部屋で暮らす事になった晩に、母と話をしていて、

「そういえば、あんな事があったね~。私怖くて怖くて、めっちゃ泣いた記憶がある(笑」と言いました。

すると母が、「う~ん、あれだけで怖がってるようじゃ大丈夫かしらね、一人暮らし」と言うので、「あれだけで?」と聞いたら、母はこう言いました。

「私ね、あの時あなたが、物凄く怖がってたから言わなかったけど…

 まずあの人ね、雨が降ってる中歩いてきたって言ったのに、全然雨に濡れてなかったのよ。

 で、左手にバットを持ってたの。しかも、あの人、男の人だったよ」

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23.バレンタイン

霊とかオカルトとは全然違うんですが、私にとってはとても忘れられそうにない話です。
姉は今、妊娠中なのですが、結婚前まで勤めていた職場に、とても仲のいい友達がいました。
その人はYさんといって、明るくてきれいで、誰にでも好かれるタイプの女性でした。

ある年の2月、姉とYさんは一緒にバレンタインのチョコレートを買いに行きました。
姉には当時彼(今のご主人)がいて、その人のための本命チョコと、職場で配るための義理チョコをいくつか買いました。
そしてYさんの買ったチョコを見ると、義理チョコの中に一つだけ、高価なチョコが混ざっていました。

Yさんは普段彼氏がいないと言っていたので、姉は
「Yちゃん、それ本命チョコ?」
と聞きました。
するとYさんは頷き、まだつきあってはいないけど、好きな人がいる。
この機会に告白するつもりだと答えました。
姉は
「そうなの!頑張ってね!」
と心から応援し、Yさんも嬉しそうでした。

そして2月14日。
姉は彼氏にチョコを渡し、同僚にも義理チョコを配りました。
姉の職場では、女の子同士でも、お世話になっている人や仲のいい友達の間でチョコのやりとりがあって、姉はYさんにもチョコをあげました。
するとYさんも姉にチョコをくれたのですが、そこで大笑い。
一緒にチョコを買いに行ったので、二人とも全く同じチョコを差し出していたのです。
でも、気持ちだから、と二人は同じチョコを交換しました。

そして仕事に戻り、しばらく後、姉はキャビネットの整理中、Yさんの机にうっかり足をぶつけてしまいました。
それで運悪く、Yさんが机の上に置きっぱなしにしていたチョコの箱が転がって、その下にあった水の入った掃除用バケツに落ちてしまったのです。
姉は(あ、しまった)と思いましたが、すぐに自分も同じチョコを持っていることを思い出し、代わりに自分のチョコをYさんの机の上に置きました。
もともと姉は甘いものがあまり好きではないので、チョコレートに目がないYさんに食べてもらったほうがいいと思ったのだそうです。

それで翌日、姉が職場へ行くと、Yさんが
「あれ、M(姉の名前)ちゃん、チョコ食べなかったの?」
と聞いてきたそうです。
姉はおかしなことを聞くな、と思いました。
自分がチョコを取り替えたことを、もしかして知っているのかな、と。
でも探りを入れてみると、そういうことでもなかったようで。
今さら
「実はチョコを落としてしまったから自分のと取り替えた」
というのもなんなので、姉は
「うん、昨夜は帰ってすぐ寝たから食べなかった。今日食べることにするよ」
と言ったそうです。

翌日、姉はいつも通りに出勤しました。
姉はそこで、先に出勤してきた同僚に
「昨夜Yさんが亡くなったよ」
と聞かされました。
自宅で亡くなっていて、お母さんに発見されたそうです。
最初はとても信じられませんでした。
つい昨日まで全く元気で普通に話していたのに、と思うと、悲しくなるより先に呆然としてしまいました。
でもそれよりも衝撃的だったのは、Yさんはどうやら自殺だったらしい、ということ。
遺書も何も無かったのですが、服毒死だったそうです。

姉の悲しみようは、妹の私から見ても辛いほどでした。自分には何もしてあげられなかった。
そこまで思いつめていたのなら、どうして言ってくれなかったのか、と言ってひどく落ち込んでいました。

それから1年後、姉は結婚し、妊娠もし、親友を失った悲しみも和らいでいるようでした。
ところが最近になって、姉がまた、あの当時の憂鬱な青ざめた顔つきをしていることが増えたのです。
それどころか、心なしかあの当時以上に陰鬱な雰囲気になっているようで…。
私は心配になって姉を問いただしました。
姉はようやく重い口を開き、語ってくれました。

Yさんが亡くなってから一年後のバレンタイン。
姉がご主人にチョコレートをあげようとすると、彼が辛そうに言ったそうです。
Yさんが亡くなる直前、彼女に告白されたのだと。
親友の彼だと思ってずっと我慢していたけれど、辛くて、辛くて、もうだめ。
このままじゃ、自殺するか、Mを殺すか、どちらかしてしまいそう。
・・・だと。

彼は驚きましたが、Yさんとつき合うつもりはないし、姉とは結婚するつもりでいることを話し、Yさんを納得させようとしたそうなのですが……。
Yさんの自殺の原因、それは姉とご主人にあったのか。
私もショックを受けましたが、姉はどれほど苦しんだことでしょう。
慰めの言葉もない私に、姉が言いました。
「自殺だったら、まだいいんだけど」
と。

どうしてか、思い出してしまう。
「チョコ食べなかったの?」
というYさんの言葉。
自殺にしては遺書も無い、あまりにも突然の死。
あの日、取り替えたチョコレートの箱。

『自殺するか、Mを殺すか、してしまいそう……』
考え過ぎだよ、と私は姉に言いました。
もう終わったことなんだし、今は妊娠中で気が昂ぶっているから色々なことに過敏になっているんだよ、と。
本当のところは、私にもわかりません。
ただ、もしこの不安が当たっていたら…と思うと、姉が、あまりにも可哀想で。

24.望遠鏡

漏れにはちょっと変な趣味があった。
その趣味って言うのが、夜中になると家の屋上に出てそこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。
いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。

遠くに見えるおおきな給水タンクとか、
酔っ払いを乗せて坂道を登っていくタクシーとか、
ぽつんと佇むまぶしい自動販売機なんかを見ていると妙にワクワクしてくる。
漏れの家の西側には長い坂道があって、それがまっすぐ漏れの家の方に向って下ってくる。

だから屋上から西側に目をやれば、その坂道の全体を正面から視界に納めることができるようになってるわけね。
その坂道の脇に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら「あ、大きな蛾が飛んでるな~」なんて思っていたら、坂道の一番上のほうから物凄い勢いで下ってくる奴がいた。

「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら全裸でガリガリに痩せた子供みたいな奴が、満面の笑みを浮かべながらこっちに手を振りつつ、猛スピードで走ってくる。
奴はあきらかにこっちの存在に気付いているし、漏れと目も合いっぱなし。
ちょっとの間、あっけに取られて呆然と眺めていたけど、なんだか凄くヤバイことになりそうな気がして、急いで階段を下りて家の中に逃げ込んだ。

ドアを閉めて、鍵をかけて「うわーどうしようどうしよう、なんだよあれ!!」って怯えていたら、ズダダダダダダッって屋上への階段を上る音が。明らかに漏れを探してる。
「凄いやばいことになっちゃったよ、どうしよう、まじで、なんだよあれ」って心の中でつぶやきながら、声を潜めて物音を立てないように、リビングの真中でアイロン(武器)を両手で握って構えてた。

しばらくしたら、今度は階段をズダダダダッって下りる音。
もう、バカになりそうなくらいガタガタ震えていたら、ドアをダンダンダンダンダンダン!!って叩いて、チャイムをピンポンピンポン!ピポポン!ピポン!!と鳴らしてくる。

「ウッ、ンーッ!ウッ、ンーッ!」って感じで、奴のうめき声も聴こえる。

心臓が一瞬とまって、物凄い勢い脈打ち始めた。
さらにガクガク震えながら息を潜めていると、数十秒くらいでノックもチャイムもうめき声止んで、元の静かな状態に……。
それでも当然、緊張が解けるわけがなく、日が昇るまでアイロンを構えて硬直していた。

あいつはいったい何者だったんだ。
もう二度と夜中に双眼鏡なんか覗かない。