18.車で迎えに来た
20年近く前、まだ私が中学だった頃の事です。
当時、親戚のおばさんでTさんという方がいました。
小さい頃は気さくでよく喋る方だったのですが、
旦那さんが病気で亡くなってからは性格が変わってしまい、塞ぎ込みがちになっているそうです。
ある日の夜、部活のバスケの練習が終わりに差し掛かった頃、(確か夜の八時半頃だと思います)
学校の体育館の玄関口に、Tさんがやって来ました。
とりあえず、私は「あれは親戚の人です」と顧問の先生に言うと、
顧問の先生は会釈しながら玄関まで向かい、Tさんと何やら喋っていました。
顧問の先生が戻ってきて、
深刻そうな顔で「○○(私の名前)のお父さんが、交通事故に遭ったらしい…」。
「え?そんな…」
「あの親戚の方、車で迎えに来たそうだから、一緒に帰りなさい」
私はもう何年もTさんと会ってすらいませんでしたが、記憶には充分残っていましたので、本人には間違いありません。
気が動転しつつ、Tさんの車に乗り込みました。
車が出発した後、夜道を走りながら、私のほうからTさんへ色々聞きました。
「お父さん今どこにいるんですか?」
「病院」
「どこの病院なんですか?」
「ここから少し行ったところ」
「どんな状態なんですか?」
「よくわからない」
なんだか素っ気ない返事ばかりです。
車はちゃんと運転してましたが、感情失せて心ここにあらずという表情でした。
しばらく走っていると、段々不審に思えてきました。
どんどん郊外のほうに走っているのです。
主立った病院は全部市内にあるし、私の住んでいる市は山間に全部集中しているような所で、
山に一旦入ると、隣の市街地までは相当距離があります。
こちらから話し掛けても、素っ気なく短い答えが来るだけだし、
昔の話を切り出そうとしても、「そう…」とつまらなそうに反応するだけ。
この隣で運転しているおばさんは本当にTさんなの?とすら思えてきました。
その内、市道が寂しくなるあたりまで差し掛かりました。
これを過ぎると、もう店らしい店すら無くなり、民家が山間にポツポツとある程度です。
まだ開いて照明の灯っていたホームセンターの前辺りで、
「部活の用事思い出したので、先生に電話してきます」
私は強引に車から降りて、ホームセンターの中まで入りました。
窓からばれないようにこっそり外を見ると、Tさんが駐車場へ車を止めて、ゆっくり店へ歩いてくるのが見えました。
何か嫌な予感がし、私は大急ぎで反対側出口から出て猛ダッシュ。
運良く道路に通りがかったタクシーを捕まえて、自宅を告げて家に帰りました。
家に着いてから母親にタクシー代を払って貰い、玄関から入ると、
父親が普通に茶の間で座り、ビール飲んでTVを見てました。
「なんだ息を切らして?」
私のほうを見て呑気そうに言ってきました。
事情を説明すると、父親の顔がだんだん厳しい表情になってきました。
Tさんとは、旦那さんが亡くなった後は神経系の病院に通っているらしく、
少々言動もおかしくなってきたたため、もう何年も交流がないそうです。
子供もおらず一人だけ残されたTさんは、精神的に疲れたのだろうと父親は言っていました。
まず、Tさんの自宅アパートまで電話。誰も出ません。(当時、携帯電話はあまりポピュラーではありませんでした)
Tさんの実家に電話し、Tさんの母親(私から見たら、祖母の妹さん)に出来事を話しました。
すると…2日前からパート先を無断欠勤していて、連絡が来ていたとのこと。
そろそろ向こうからも連絡しようと思っていた所だったそうです。
(Tさんがあんな状態で交流なくなったを知っているため、遠慮して連絡が遅くなったらしい)
翌日、警察に捜索を届けて調べて貰いましたが、
Tさんの部屋からは財布以外、これといった貴重品も持ち出しておらず、
車と本人の行方が全く判らない状態ということが判りました。
ただ、部屋には女性の割にはお酒の空瓶が多く、神経系の処方薬が何種類かあったそうです。
20年経過しましたが、おばさんのTさんは未だに行方が判っていません。
恐らく、私がホームセンターの窓越しに目撃したのが最後だと思います。
長い間行方不明のため、法律上も失踪扱いになりました。
もしあの日、私が車に乗せられるがまま付いていってたら、どうなっていたか…。
そして、私はどこに連れて行かれようとしていたのか…。
謎が多い出来事でした。
19.会社の同僚
これは、私が以前働いていた会社の同僚の女性の話です。
彼女は私より1歳年下で、後輩でした。明るく愛想も良いので可愛がってあげようと思い「何か困った事があったらいつでも相談してね。」と声をかけたりしていたのですが…。
次第に彼女は私に頼る様になり、ランチも一緒に行き、プライベートの話を私にしてくる様になりました。
彼女はある時なんて事ないという口調で
「私、彼の携帯を必ずチェックするんですよ。それで前に知らない女の子からメールが来てて、彼にバレない様に追い払ってやったんです。」
と笑顔で言ってきたのです。
「どういう風に?」
と訊くと不気味な笑みを浮かべ
「その子のメアドを抜いて間違えたフリをしてメールしたんです。で、仲良くなってからおびき寄せて会う約束をして、当日の予定よりも早い時間に彼を待ち合わせ 場所に呼んで、その子が来たタイミングでわざとイチャつく姿を見せたら、泣きそうな顔して居なくなりました。それ以降は一切連絡来なくなりましたよ。」
と言い、私は彼女が怖くなりました。
彼女の執着心、復讐心は相当なものですし、その子と仲良くなってから突き落とし、用が済んだから知らん顔をするという神経が恐ろしくなったのです。
明るく笑顔を振りまく彼女に、このエピソードを聞いてから警戒する様になりました。
その後、彼女は常に私に付いてくる様になり、会社からの帰り道も一緒に帰ろうとして来る様になりました。
それだけならいいのですが、彼女は私のプライベートに興味を持ち始めたのです。
私の彼の話、育った環境の話、親の話…色んな事を根掘り葉掘りしてくるのです。
そして次第に私にライバル心を持つ様になったのか、私を蹴落とす様な事をしてくる様になりました。
上司に私の評価を下げる様な事を言ったり、社内の人に嘘を言いふらしたりと、わざと仕事上でいじわるをする様になったのです。
恐ろしいのは、私に対しては今までと変わらず笑顔を振りまき、甘えた声で話しかけてきていたのです。
私はその会社を辞めたのですが、今でも彼女からメールが来ます。
私にとって怖いのは霊ではなく生きている人間です。
20.壁と話す男
この前エレベーター乗ろうとしたらさ、男がいたのよ。後ろ向きで。
エレベーターに人がいても驚かないけど、後ろ向きで乗ってる人ははじめて見たからちょっと驚いた。
一瞬戸惑って乗ろうか迷ったんだけど、掲示物見てるとかだったら失礼だし、みたいなつまらない気をつかって乗ったの。
なんかブツブツ言ってるから背中向けたくねえと思って壁を背にして横にポジションキープ。
となりちらっと見たら、直立姿勢のまま壁まで10cmくらいまで顔近づけてて憤怒の形相。
鬼のような顔ってのはあのことだね。
南無三!と唱えて早く一階に着くことを祈った。
八階だから下まで結構時間かかる。
「だーかーらー、貴様が言うか!ボケェ!」
「お、お、お俺のせいか!?あ!?」
ブツブツっていうかもう怒鳴ってるよね。
まだ6階かよー…と一階一階嫌な汗かきながら数えてた。
ようやく一階についてそそくさと逃げたんだが、離れてからエレベーター見ると男はおりていない様子だった。
翌月くらいかな、またそいつに会った。今度は地下通路で壁と話してた。
それから頻繁にそいつを見るようになって、とうとう自分家の近所にまで現れた。
やばい、キチに狙われてる?と膝ガクガク。
たまたま友人と歩いてたときにそいつがいたから、「またいるよ、あいつ」と言ったところ友人が「誰?」と
そこで壁と話してるやつだよ、と言っても誰もいないじゃないか、と。
そこで初めてこの世のモノじゃねえ!と気づいた。
そういえば会社のエレベーターで見たときも残業で一時すぎてたしな、となんだか納得。
幽霊なら刺されることもないだろうと逆に安心した。そしたら、とうとう家のドアの前に現れた。
ドアと話してるからドア開けられないし、一旦逃げようとコンビニへ。戻ったらいなかった。次の日は家の中に現れた。冷蔵庫と話してた。
家には出ないと思ってたから、流石に怖くて、キッチンの塩ふってみたけど効果無し。
諦めて寝ようとしても怒鳴り声が煩くて眠れない。すっかり寝不足。
ムカついたから「うるせえんだよてめえ!消えろ!」と怒鳴りつけた。
次の日寝てたら顔のまん前に現れてブツブツブツブツ。
精神的にかなり参ってたと思う。
「なんなんだよてめえ!俺がなにかしたのか?ふざけんなよ!」
とそいつが現れる度に怒鳴り合ってた。んでね、ある日それを友人に見られまして
「お前壁と話してたよ…」
と。ああ、なんか合点がいった。そういうことか、と。直ぐ様病院へ行きました。精神病だと思ったんだよ。結果は脳の血管がふさがってなんちゃらかんちゃらで、バイパスが出来て助かったけど危なかったと言われました。
あれが幽霊なのか幻覚なのかは分からず仕舞いです。
21.ストーカー
私が中学3年生だった時のことです。
隣町の大型スーパーに家族で出かけました。
はじめ私はひとりで文具売り場に行き、陳列棚の間で商品を見ていました。
すると、左手の方から人がやって来るのが視界に入ったので、後ろを通りやすいように商品側に寄りました。
しばらくして、背中になにかぶつかりました。
振り返ると、さっきの人が通り過ぎただけでしたが、私にぶつからないで通れる充分な幅があったのに、おかしいなあと思いました。
次に私は、CD売り場に行きました。
CDを手にとって、曲目をチェックしては戻す、ということを何度かしているうちに、私の向かい側に人が立っていることに気づきました。
陳列棚は両側にCDを並べてあるので、向こう側のCDを見ているんだな、と思いました。
しかし、しばらくたってもその人はその場から動かないので、なんとなく私は顔を上げてその人を見ました。
すると、その人は私を見ていたのです。
私と目が合っても、一向にそらそうとしません。
それどころか瞬きもしていません。
たまらず私のほうが目をそらしました。
心臓がドキドキいっています。
この人は一体なんなんだろう???…
びっくりして私は移動しました。
さりげなく別のCDを探しているふりをしました。
やはりしばらくして、その男は私の向かい側にやって来ました。
しかし今度はさっきとは違います。
陳列棚の向こう側は、CD売り場の外で、ただの通路です。
ポスターこそ貼ってあれ、CDは置いてません。
私が顔を上げると、やっぱり彼は私をじっと見ています。
この瞬間、私は思いました。
文具売り場で背中にぶつかったのは、こいつだったのか!!
あの時は後姿しか見なかったが、服の色がなんとなくこんな感じだった。
…ということは、あの時から私の後をつけてる?!
キモイ!!!というより、怖い!!!
私は家族のところへ行こうと思いました。
しかし、ダッシュで逃げたら相手もダッシュで追いかけてきそうな気がして怖かったので、なるべく平静を装ってCD売り場を出ました。
しばらく歩いて、後ろを降り返ると、ヤツはいませんでした。
へっ??…拍子抜けしたと同時にほっとしました。
私の勘違いだったのかな?
とにかく家族を探そうと、エスカレーターで階を移動していると、ちょうど上りと下りが交差する辺りで、奴と目が合ってしまったのです。
ヤバっと思った瞬間、なんと奴はエスカレーターを逆走し始めました!!
やっぱり勘違いじゃない!!!
再び恐怖が湧きあがってきます。
私も走りました。
一刻も早く家族に会いたい!!、その願いが通じたのか、エスカレーターを降りたところで、家族と合流しました。
なぜか私は男に追われていることを話せずに、
「はやく帰ろう」
そう言うのがやっとでした。
買い物は終わっていたらしく、
「じゃあ帰ろうか」
と言われ、駐車場に向かいました。
私はまだドキドキしていました。
エスカレーターを逆走した奴は、同じ階、いや、もうこの近くにいるはずです。
後ろから声がしました。
「ひとりじゃないのか」
22.真夜中の訪問者
私は父親が生まれた時からいなくて、ずっと母親と二人暮しでした。(現在は結婚して、家は出ていますが)
私がまだ母と暮らしていた、17歳の頃の事です。