出木杉『そうそう。それをメールしたんだ。あれはすごいナノマシンだよ』
のび太「だろうね。あのサイズで空気圧縮や音声認識をやるんだから……」
出木杉『こっちでの詳しい解析結果はメールに添付しておいたから。あとは、そっちの専門
分野だろ?』
のび太「厳密には違うけど、とりあえず了解」
出木杉『それと、しずかちゃんがお昼一緒に食べようって』
のび太「ああ……わかった。生協?」
出木杉『うん、12時50分に』
支援
しずかはドリア、出木杉はスパゲッティを食べている。のび太は豚骨ラーメンの器をテー
ブルにおいて、腰掛けた。
しずか「のび太さん、またラーメン?」
のび太「ん? うん。昨日は醤油だったから今日は豚骨」
出木杉「不健康だなぁ」
しばらく取り留めのないことを話しながら食事を楽しむ。
全員が食べ終わったのを見計らって、出木杉が本題に入った。
出木杉「昨日コピーロボットが出たのはスネ夫くん家と、駅の駐輪場付近だよね。で、実は
安孫子大学の都市環境工学科があの辺に実験用の電磁波の測定装置を設置していた
んで、ちょっとそのデータを見せてもらったんだ」
そう言うと、出木杉は鞄の中からA4の用紙を何枚か取り出した。
ボットが出た時間にどちらの装置も微弱なマイクロ波を測定している。もっと厳密
に言えば極超短波帯なんだけど……つまり準マイクロ波だ。おまけにこの周波数は
現代では観測例がない」
のび太「つまり、コピーロボットがその発信元だと?」
出木杉「可能性は高い。同じものが観測されたらすぐに観測地域を連絡してもらえるよう安
孫子大には頼んであるから、うまくすればコピーロボットの位置を把握できるかも
しれない」
のび太「すごいな」
これはいいSF
た時間帯の測定データ。剛田くんの家からはだいぶ離れた場所に設置されていたに
も関わらず、強い電磁波を測定している。どこでもドアの影響だろうね。その
直後、東久留米市の一部地域で多大な電波障害が発生している。おそらく、その近
辺がどこでもドアの出口になったんだと思う」
しずか「じゃあ、武さんたちを襲った人たちは東久留米にいるの?」
出木杉「だろうね。どこでもいいなら隣の市なんて中途半端な場所には逃げないと思う。た
ぶん奴らの拠点がそこにある」
のび太「時空を曲げるどこでもドアだからね……強い影響が観測されてもおかしくない」
出木杉「これである程度向こうの動きが把握できる」
*このSSはのび太たちの居住区を田無市(現・西東京市)とした設定ですm(_ _)m
のび太は紙袋から無骨な機械をいくつか取り出す。
のび太「まずは、受信機。特定の周波数を感知できるんだ。急いで作ったから精度はあま
り良くないけど、相手がコピーロボットかどうかはくらいは確かめられる」
出木杉「やっぱりのび太くんも電磁波の可能性は気づいてたか」
のび太「いや、出木杉くんほど正確には掴んでなかったよ。それと、こっちはスタンガン。
研究室にあったコンデンサを改造して作ったんだ。これも急ごしらえだから使い捨
てだけど、かなりの威力があるよ。コピーロボットに効くかどうかはわからないけ
ど、ロボットである以上は強い電流には弱いと思う」
出木杉「なるほど……鼻のボタンを押すよりはやりやすそうだ」
のび太「それと、ちょっと面白い機能もついててね……」
そう言ってのび太はニヤリと笑った。
ジャイ子の怪我は軽かったのですぐに退院できるとのことだった。退院し次第すぐに田舎
の祖父の家に療養に行かせる話になっていた。どこでもドアがある以上安心はできないが、
とりあえず東京にいるよりは安全だろう。
スネ夫「コピーロボットってもともと人間を襲うことが出来るように出来ているものなのか
な?」
ジャイアン「は? そうなんじゃねぇの。現に昨日おまえを襲ったんだろう?」
スネ夫「いや、未来じゃ市販されてるくらいのものだからさ、だったら安全装置というか…
…人に危害を加えるようなことは出来ないように作られてるんじゃないかなって思
って。でなきゃ犯罪し放題じゃん」
ジャイアン「じゃあ昨日おまえを襲ったやつは?」
スネ夫「違法改造じゃないかな。ジャイアンだって高校のころ改造バイクに乗ってたことあ
ったでしょ? ひみつ道具だって改造するやつがいてもおかしくない」
かっけww
スネ夫「やつらが持ってるひみつ道具は僕らが使ってたのより威力が高いってことになる。そもそも
、僕らがコピーロボットの鼻を押さなきゃコピーロボットは僕らに変化できない。でも、マ
マはコピーロボットの鼻を押した記憶はないって言ってる……おそらくそれも改造だろう。
奴らのコピーロボットは誰にでも化けれるのかもしれない」
ジャイアン「面倒くせぇな。男なら直接拳で来いってんだ」
ジャイアンはシャドーボクシングをして勇んで見せながら窓際のほうへ行った。
スネ夫は苦笑しながらそれを見る。
スネ夫「どうしたの、ジャイアン」
ジャイアン「出木杉が、いる。病院の門の辺りでこっちを見てるぞ」
スネ夫「そんなまさか。だってあいつら大学にいるって……」
二人は顔を見合わせた。
ジャイアンはすぐに病室を飛び出すと、携帯電話使用可能スペースへ行って出木杉に電話
をかける。
出木杉『もしもし、剛田くん? 何かあった?』
ジャイアン「おい出木杉、おまえ今どこにいる?」
出木杉『え? 大学生協の食堂だよ。のび太くんとしずかちゃんも一緒だけど……まさか』
ジャイアン「ああ、おまえのそっくりさんが病院の前でこっちを見てやがんだ」
出木杉『……ちょっと待ってて。すぐにかけ直すから』
電話が切れた。とりあえずジャイアンは携帯の電源を入れたままスネ夫の病室に戻った。
スネ夫「どうだった?」
ジャイアン「やっぱり、本物の出木杉は大学にいる。ってことはだ、ありゃあ偽者だな」
スネ夫「ここがバレたのかな?」
ジャイアン「わからん」
すぐに、出木杉から電話がかかってきた。今度は病室でそのまま出る。
ジャイアン「おう、俺だ」
出木杉『その病院付近の観測装置が準マイクロ波を測定している。コピーロボットで間違い
ないと思う。少なくとも単なる僕のそっくりさんじゃない』
ジャイアン「何だ、その純マイク派ってのは?」
コピーロボットの居場所がわかるんだ』
ジャイアン「なんかわかんねぇけどすげぇな。さすが出木杉だぜ」
出木杉『とりあえず、僕は今日は病院には顔を出さないよ。もし僕が病院に現れたら、コピ
ーロボットと思ってぶちのめしてくれ』
ジャイアン「わかった」
その一時間後、偽出木杉は病院前を去っていった。そして、その日はもうコピーロボット
が現れることはなかった。
余談だが、その翌日事前連絡して行ったにも関わらず、本物の出木杉はジャイアンにぶち
のめされたのだった。まったくもって理解力のないジャイアンである。
のび太たちの予想を裏切り、あれ以降特に襲撃らしい襲撃もなかった。相変わらずコピー
ロボット準マイクロ波やどこでもドアによる電波障害は観測され続けていたがが、目立った
動きはないままだった。
スネ夫「何を考えてるんだろう、あいつら」
出木杉「様子を見てるんじゃないかな。何にしても、準備する余裕があるのはこっちとして
はありがたいよ」
しずか「ジャイ子ちゃんたちの方にも変わったことはなかったらしいわね」
出木杉「でも……安心はできないね」
年とって馬鹿になってないかw
スネ夫はひざの上のノートパソコンを閉じて言った。
このノートパソコンはスネ夫の自宅にあったもので、病室での使用は許可されていた。
スネ夫「都内だけに留まらず、全国のニュースを調べて、ひみつ道具が関わっていそうなも
のを探してみた。あまりこれといったものはなかったけど、ロシアのサンクトペテ
ルブルクで大規模な電波障害が8回。どこでもドアかもしれない」
出木杉「いや、そのうち4回は今までのデータと比べると規模が大きすぎる。もっと強い電
磁波を出すもの……どこでもドア以上に時空をゆがめるものだと思う」
スネ夫「とすると……」
しずか「タイムマシンかしら?」
出木杉「だろうね。拠点は東久留米でも、タイムマシンの出入り口はサンクトペテルブルク
にあるのかもしれない」
ジャイアンは段ボール箱を抱えている。
のび太「出木杉くん、頼まれたもの持ってきたよ」
出木杉「ああ、実用化できた?」
のび太「一応ね」
ジャイアンが持ってる段ボール箱を開け、エアキャップに包まれた携帯電話を取り出す。
しずか「携帯?」
出木杉「そう。企業に依頼されてうちの研究室で開発した最新式のGPS携帯。かなり小さい
誤差で相手の居場所を確認できる。のび太くんに頼んで実用レベルにしてもらった
んだ」
のび太「実用レベルとは言っても、通話は無理だよ。ただGPSでみんなの居場所がわかれ
ば、違う場所にあらわれた場合コピーロボットと疑うことが出来る」
ジャイアン「でもよ、勝手に使っていいのか? 企業のだろ?」
出木杉「大丈夫だよ、その企業って……」
スネ夫「うちの会社なんだ」
スネ夫はニヤリと笑った。
