った。
もともと酒の弱いのび太は途中からソフトドリンクに切り換えていたし、しずか
と出木杉とスネ夫はホロ酔い程度、ジャイアンに至ってはあれだけ飲んでまったく
変わりがない。
スネ夫「もう一軒……はさすがに無さそうだなww」
しずか「みんな明日も仕事だもんね」
ジャイアン「よぉ、みんなはどうやって帰るんだ?」
出木杉「僕とのび太くんとしずかちゃんは方向が同じだから、3人で一緒に電車で
帰るよ」
のび太「いや、僕は大学にいったん戻るから……」
タイムマシンで歴史が変わったと思ったらタイムマシンで歴史が変わることも歴史だったみたいな
しずか「ええ……」
スネ夫「僕はタクシーを拾うよ。のび太も乗ってく?」
のび太「いいよ、スネ夫ん家と方向逆だし」
ジャイアン「俺は歩いて帰るぞ」
しずか「武さん、大丈夫?」
ジャイアン「なーに、しずかちゃん。この俺様に怖いものなどない!
さ、行くぞのび太!」
のび太「えぇ?なんで」
ジャイアン「いいから一緒に帰ろうぜ!心の友よ!」
帰り道でふと、ジャイアンが口を開いた。
のび太「ん?」
ジャイアン「よかったのか? しずかちゃんを出木杉と二人で帰してよぉ」
のび太「……どうして? 僕は別にしずかちゃんの恋人じゃあないよ」
ジャイアン「でも、未来の結婚相手だ」
のび太「それも、どうかな」
ジャイアン「??」
のび太「未来は変わった……そう考えるなら、ドラえもんが見せてくれた僕としず
かちゃんの未来だって怪しいよ。だったら僕にしずかちゃんを繋ぎ止める
権利なんかない」
ジャイアン「建前はわかった。本音はどうなんだ? おまえはしずかちゃんのことが
好きじゃあないのか?」
のび太「僕は……」
ジャイアン「難しいこと考えすぎんな。頭こるぞ」
そういってジャイアンはのび太の頭をはたいた。
その痛さを妙に優しく感じたのび太だった。
オートロックの入り口をくぐり、エレベーターを待つ。
スネ夫(のび太はしっかりしたようで、やっぱり相変わらずだな。しずかちゃんを
出木杉に持っていかれちゃってさ)
エレベーターに乗り込み、上昇を感じながらスネ夫は昔を思い出した。
いつからだろうか、スネ夫はのび太としずかの結婚を望むようになっていた。それ
はタイムテレビで見た幸せな光景のせいだろうか?
あの未来だけは変わってほしくない。そう思っている自分にスネ夫は驚く。昔は自
分だって、しずかのことが好きだったはずなのに。
スネ夫(ドラえもんのせい、かな)
自分の部屋の前に着くと、ポケットに手を突っ込んで鍵を探す。
と、そのときスネ夫は違和感を感じ、顔を上げた。
窓から明かりが漏れていた。出掛けに明かりは全部消したはずなのに。
スネ夫(誰か……いる)
ら玄関に身を滑り込ませた。傘立てからお気に入りのバーバリーの高級傘を引き抜く
と、両手で構えながら部屋の中へ入っていく。
そのときだった。
突如開いたウォークインクローゼットから人影が飛び出し、飛びついてきた。
傘をそちらに構えなおす暇もなく、スネ夫は自由を奪われる。
???「スネちゃま、お帰りなさいざーます!!」
スネ夫「……ママ、何でいるの?」
抱きついてきた母親を引き剥がし、スネ夫は傘を床に置く。
スネ母「スネちゃまが心配でつい来ちゃったざます」
スネ母「いーえ、スネちゃまはまだまだ子供ざます」
スネ夫「もう子供じゃな……」
言いかけたスネ夫は母が手に何か握っていることに気づいた。
それが何であるかスネ夫が認識するより早く、その「何か」はスネ夫の腹部に突き立
てられていた。
スネ母「スネちゃまは子供ざます。そして子供のまま……死ぬざます」
スネ夫は母の手に握られた包丁が自分の腹に突き刺さっているのを見て、呆然として
いた。いったい、なぜ……
包丁が引き抜かれる。激痛とともに血液が噴出し、スネ夫はその場にくず折れた。
言いかけたその背中に再び包丁が突き立てられる。
視界が歪む中、必死でスネ夫は顔を上げる。目の前に母の顔があった。
笑っている。鼻が少し赤かった。
スネ母「死ぬざます死ぬざます死ぬざます!!!!」
スネ夫「く……そ……」
バーバリーの傘を探すが、手が届かない。
スネ夫は最後の力を振り絞り、拳を突き出した。抵抗にも攻撃にもならない、その力
ない一撃がゆっくりと母の顔面を打つ。
すると突如、母の動きが停止した。そして、空気の漏れるような音とともに母の体が
萎み、人形へと変わっていく。
スネ夫(コピー……ロボット? そうか、鼻のボタンに拳が当たったから……)
そこまで考えたところで意識が遠のき、スネ夫の視界は黒で塗りつぶされていった。
ジャイアンがしつこく、「俺の家で飲みなおそうぜ」と誘ってくるのだ。
明日も仕事だから、と断ろうとするとすぐに昔のガキ大将の顔を覗かせるのだから
困ったものだ。
ジャイアン「いいじゃねぇか。ほら、最近いい芋焼酎仕入れたんだぜ。一緒に飲もう
じゃねぇか」
のび太「いや、今日は遠慮しとくよ」
ジャイアン「それにさ、留学していたジャイ子が今ちょうど帰ってきてるんだよ。あ
いつもおまえに会いたがってたぜ。それにな、ここだけの話あいつ昔は
おまえのこと……」
のび太「いや、遠慮しとく」
ジャイアン「それにあいつ、海外のファッションに影響されたのか最近すごくお洒落
になったんだぜ? 今日なんかすげぇミニスカートを……」
のび太「断固、遠慮しとく」
ジャイアン「しょうがねぇな、とっておきの情報教えてやるよ。俺知ってんだ。ジャ
イ子のやつ今日は安全日……」
のび太「遠 慮 し と く」
ろまで来てしまった。
ここまで来たらもう覚悟を決めるしかないだろう。のび太は腹をくくった。
のび太(さよなら……僕のDT……)
そのときだった。
???「キャアアアアアアアアアアアアアッ!」
のび太「!? ジャイアン、今の悲鳴……」
ジャイアン「ジャイ子の声だ」
ジャイアンの顔が蒼白になった。
母と、わき腹を押さえてうずくまるジャイ子の姿があった。わき腹を押える手の隙間から
血が流れでいる。
ジャイアン「ジャイ子ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
のび太「落ち着くんだジャイアン!!とにかく止血を……ぐあっ!!」
横っ腹に衝撃を感じると同時に、のび太の体は蹴り飛ばされタンスに叩きつけられた。
ジャイアンが振り返ると、のび太を蹴り飛ばしたと思われる二人組が立っていた。二人
とも黒服にサングラス。その手には血のついたナイフが握られていた。
黒服1「大人しくするんだな。騒がしいのはごめんだ」
黒服2「しかし野比のび太まで一緒とはありがたいな……手間が省けた」
>>80
始めてっす
84
: :16:35:21.21 ID:黒服1「あ? 何がだ?」
ジャイアン「ジャイ子と母ちゃんにこんなことしたのはおまえらかって聞いてんだ!」
返事を待たずにジャイアンが突撃する。ジャイアンのラリアットが黒服の二人を吹き飛
ばした。
黒服1「がはぁ!!」
黒服2「ぐほぁぁ!!」
ジャイアン「貴っ様ら、よぉくも~~~!!!!!!!」
咆哮しながら、ジャイアンは馬乗りになり二人を殴り続ける。
黒服1「が!!ちょ……やめ……ぐほぉ!!」
バーローくんなwww
黒服の蹴りがジャイアンの腹にヒットし、後退したジャイアンと黒服二人の間に間合い
ができる。
ジャイアン「よくも、よくも母ちゃんを!ジャイ子を!のび太を!!」
黒服1「はぁ……はぁ……こいつ、何だよ。化け物かよ」
黒服2「このままじゃ分が悪いな。あれ、使うか」
黒服1「しかし、未来の痕跡を残すわけには……」
黒服2「言ってる場合か? 保身が優先だ」
そう言うと黒服のうち一人がポケットに手を入れ、銀色の筒状のものを取り出す。
男はそれを指にはめ、拳銃よろしくジャイアンのほうへ構えた。
普通なら油断してやられていただろう。
しかしジャイアンは知っていた。
ジャイアン(あれは……空気ピストル?)
未来のひみつ道具、空気ピストル。
「バン」という声に反応して空気の塊を射出する。射程距離は10メートル前後。
ジャイアンは瞬間的に身をよじるとテーブルの上の大理石の灰皿を手に取る。
黒服2「くらえ!!バ……」
「バン」と言い終えるより早く、ジャイアンがアンダースローで放った大理石の灰皿が
空気ピストルを黒服の指から弾き飛ばしていた。指ごと粉砕していたかもしれない。
元・ジャイアンズピッチャーの豪速球は健在だった。
黒服1「くそ、大丈夫か!仕方ない、逃げるぞ!!」
黒服二人が廊下へと逃げていく。
ジャイアン「逃がすかよ!!」
再び投げた灰皿が今度は別の黒服の背中にヒットする。
黒服が何かを落とした。
黒服1「がぁ!!……あ、待て!!ビッグライトを落とした!!」
黒服2「拾ってる暇はねぇ!どうせバッテリー切れだ、放っておけ」
そのまま黒服は廊下を曲がっていく。
ジャイアンがあとを追いかけ廊下を曲がると、男たちの姿はなかった。
代わりに、ピンク色のドアが消えていくの見えた。
ジャイアン「のび太!!おまえ大丈夫か!!」
のび太「ああ、僕は蹴られただけだから……あいつらは?」
ジャイアン「逃げたよ……どこでもドアでな」
のび太「なんだって!? ……いや、それより今はジャイ子ちゃんの手当てが先だ」
ジャイアン「ジャイ子!!ジャイ子は助かるのか!!」
のび太「わき腹だからたぶん致命傷ではないと思う。僕は専門じゃないけど……止血し
て急いで病院に連れて行けば……」
小学校の頃からしずかとはよく遊んだし、彼女からの好意も少なからず感じる。間違
いなくいける、そう思うのに何故のび太に遠慮してしまうのだろう。別にのび太としずかは付き合ってるわけではないはずだ。なのに、どうして?
出木杉(これが正しい未来ではないからか? やはりしずかちゃんはのび太くんと結ばれ
るはずだからか……? いや、そんなの僕らしくない。それじゃまるで運命を認
めるようなものじゃないか……)
自分自身が何を願っているのかわからない。
しずかの気持ちがわからない。
何となく、逃げ出したいような気持ちに駆られた。
やっぱ男は強さだな
顔に弾が直撃して酷いことに
出木杉「どうしたんだい、しずかちゃん」
しずか「あれ……スネ夫さんじゃない?」
出木杉「え? スネ夫くんはタクシーで帰ったはずじゃ……」
しずか「でも、ほら……」
しずかの言うとおり、少し先の路地に黒のトヨタ車が停められいてその横にコートを着たスネ夫が立っていた。
出木杉「スネ夫くん!どうしたんだい? 帰ったんじゃあ……」
スネ夫「いや、ちょっと用事を思い出してね。家からすぐに引き返してここで君たちを待 ってたんだ」
しずか「スネ夫さん、でも飲酒運転じゃないの?」
スネ夫「細かいことは気にするなよ。ほら、全然酒臭くないだろ? もうアルコールは
抜けたよ」
スネ夫「それはね……」
そのとき、出木杉の上着の中で携帯が震えた。
出木杉「あ、ちょっとごめん。電話が……」
電話を取ろうとして出木杉はいぶかしむ。スネ夫の携帯からの着信表示が出ていたか
らだ。不思議に思いつつも電話に出る。
出木杉「もしもし……」
スネ夫『……出木杉くん? すぐに、しずかちゃんを連れて逃げ……るんだ』
驚いて出木杉は目の前のスネ夫を見る。彼は電話を持ってないし、何も喋っていない。
しかし、電話の向こうの声もスネ夫に違いなかった。
スネ夫『逃げて……僕は刺された。さっきまで意識がなかったんだ……相手は……』
そこでスネ夫の声が途切れる。また意識を失ったのかもしれない。
そのとき、目の前のスネ夫がコートの内ポケットから包丁を取り出し突進してきた。
しずかの短い悲鳴。
出木杉は包丁を鞄で受け止めると、しずかの手を引き逃げる。車を挟んでスネ夫と対峙した。
スネ夫「何を言ってるんだい? 僕はスネ夫じゃないか」
出木杉「嘘だ!今電話してきたのが本物のスネ夫くんだろう。君は偽者だ!」
しずか「鼻……」
出木杉「???」
しずか「鼻が赤いわ!!出木杉さん、あれはコピーロボットだわ!未来の道具なの……鼻
のボタンを押せば止まるはずよ!」
出木杉「鼻のボタンを……」
言いながら出木杉は偽スネ夫が乗ってきた車を見ていた。
キーがついている。そして、偽スネ夫がいる助手席側のドアはロックされている。
出木杉「しずかちゃん……運転できるよね?」
小声でしずかに言う。
出木杉「僕が奴を止める。その隙に君はこの車に乗って逃げるんだ。のび太くんか剛田
くんに連絡を取ってスネ夫くんを助けに行ってくれ」
しずか「そんな!出木杉さんが危ないわ!!」
出木杉「大丈夫、僕は柔道をやってたから……それに、本物のスネ夫くんが怪我をして
る。早く助けに行かないと」
しずか「……わかったわ」
出木杉「よし、合図でいくよ。1……2の……3!!」
しずかは運転席のドアをあけ素早く車に乗り込むと、キーを回した。
二人の意図に気づいた偽スネ夫が、ボンネットを飛び越えるようにして襲い掛かってきた。その偽スネ夫に鞄を投げつけると、出木杉は包丁を持った手に組み付く。
偽スネ夫「くそ、離せ!!」
出木杉「離……すもんか!しずかちゃん……急いで!!」
しずかは頷くと、アクセルを踏み込む。少しばかり無茶なスピードで、車が発進した。
出来杉死亡フラグじゃねえか…
。が、偽スネ夫は一瞬早く身を引き、出来杉と距離をとる。
偽スネ夫と出来杉は少し間合いを取って向き合う。
突如、偽スネ夫は出木杉に背を向けて走り出した。
そのまま駅の駐輪場へと逃げ込んでいく。
出木杉「!? 待て!!」
すぐさま後を追って出木杉も駐輪場へ入った。駐輪場は暗く、雑然と自転車が置かれて
いるため見通しが悪い。
周囲を見渡していると、右後ろから物音がした。偽スネ夫が包丁を持って向かってくる。
出木杉はすばやく偽スネ夫を掴むと、軸足を素早く踏み出しもう片足で偽スネ夫の足を刈り上げた。大外刈り、一本。頭から落ちる危険な技だが、ロボット相手に容赦も何もなかっ
た。